海気
かいき
名詞
標準
sea air
文例 · 用例
これなる丘と相対して、対うなる、海の面にむらむらと蔓った、鼠色の濃き雲は、彼処一座の山を包んで、まだ霽れやらぬ朝靄にて、もの凄じく空に冲って、焔の連って燃るがごときは、やがて九十度を越えんずる、夏の日を海気につつんで、崖に草なき赤地へ、仄に反映するのである。
— 泉鏡花 『悪獣篇』 青空文庫
海気をふくんで何となし肌当たりのよい風がおのずと気分をのびのびさせる。
— 伊藤左千夫 『紅黄録』 青空文庫
海気は衣を撲って眠り美ならず、夢魂半夜|誰が家をか遶りき。
— 幸田露伴 『突貫紀行』 青空文庫
その結果が短距離の西比利亜線を棄ててわざわざ遠廻りの海路を択ぶに決したのは、寒い西比利亜線を行くよりは船で帰るが海気療法ともなるという意見が勝ったからだそうで、不思議に加茂丸へ移乗した時は担架で運ばれたほどの重態が出帆してから次第に元気を恢復して来た。
— 内田魯庵 『二葉亭四迷の一生』 青空文庫
二人はやがて着物の脱ぎ場へ入つて、足を休めながら海気に吹かれてゐた。
— 徳田秋聲 『或売笑婦の話』 青空文庫
頸聯の「竜土烟霞連海気、神田草樹映城雲」は、わたくしをして冬旭が麻布竜土町辺に住んでゐたかを思はしめるが、さるにても神田は何故に点出せられてゐるだらうか。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
レモンが溶け流れた薄紅色の海気のなかを匂って来る。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
殊に父が亡くなってからまだ日も浅く、その間どこへも出かけず引籠りがちだったもの寂しさの、身に沈み入って来ているときだったので、一度海気にあたって、旅の日のうつろいに気持ちを転じるのも、元気を取り戻す法かとも思われた。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
標準
ocean and atmosphere
標準
type of yarn-dyed silk goods