懐紙
かいし異読 ふところがみ
名詞
標準
paper folded and tucked inside the front of one's kimono (esp. for use at the tea ceremony)
文例 · 用例
たゞしかし、湖畔五|里余り、沿道十四|里の間、路傍の花を損なはず、樹の枝を折らず、霊地に入りました節は、巻莨の吸殻は取つて懐紙へ――マツチの燃えさしは吹き消して、もとの箱へ納めましたことを憚りながら申し出でます。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
そうして懐紙のページによって序破急の構成がおのずから定まり、一巻が渾然とした一楽曲を形成するのである。
— 寺田寅彦 『俳諧の本質的概論』 青空文庫
さそくに後を犇と閉め、立花は掌に据えて、瞳を寄せると、軽く捻った懐紙、二隅へはたりと解けて、三ツ美く包んだのは、菓子である。
— 泉鏡花 『伊勢之巻』 青空文庫
――懐紙の端乱れて、お沢の白き胸さきより五寸|釘パラリと落つ。
— 泉鏡花 『多神教』 青空文庫
黒髪は乱れて頸に縺れ頬に懸り、ふッくりした頬も肉落ちて、裾も袂もところどころ破れ裂けて、岩に縋り草を蹈み、荊棘の中を潜り潜った様子であるが、手を負うた少年の腕に縋って、懐紙で疵を押えた、紅はたちまちその幾枚かを通して染まったのである。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
眠れるか、少年はわずかにその頭を掉ったが、血は留らず、圧えた懐紙は手にも耐らず染まったので、花の上に棄てた。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
……いや思出せば、なおその昔、伜が腹に居ります頃、女房と二人で、鬼子母神様へ参詣をするのに、ここを通ると、供えものの、石榴を、私が包から転がして、女房が拾いまして、こぼれた実を懐紙につつみながら、身体の弱い女でな、ここへ休んだ事もあります。
— ――(前題――楊弓) 『ピストルの使い方』 青空文庫
」 ……包みもしないで――翠を透かして、松原の下り道は夕霧になお近いから――懐紙に乗せたまま、雛菓子のように片手に据えた。
— ――(前題――楊弓) 『ピストルの使い方』 青空文庫
標準
paper used for writing tanka
ウィキペディア
懐紙(かいし、ふところがみ)とは、懐に入れて携帯するための小ぶりで二つ折りの和紙のことである。手にして持ち歩いている紙という意味で手紙(てがみ)ともいう。たとうがみともいう。また、茶席で使用する懐紙は小菊(小菊紙の略)とも呼ばれる。
出典: 懐紙 — ウィキペディア / CC BY-SA 4.0