狂瀾
きょうらん
名詞
標準
raging waves
文例 · 用例
千軍万馬を往来した将軍の風格、狂瀾怒涛に慣れた老船頭の態度等に現わるる、犯すべからざる姿態の均整と威厳は、見る人々に言い知れぬ美感と崇高感を与える。
— 夢野久作 『能ぎらい/能好き/能という名前』 青空文庫
泡立つ波、逆卷く潮、一時は狂瀾千尋の底に卷込まれたが、稍暫して再び海面に浮上つた時は黒暗々たる波上には六千四百|噸の弦月丸は影も形もなく、其處此處には救助を求むる聲たえ/″\に聽ゆるのみ、私は幸に浮標を失はで、日出雄少年をば右手にシカと抱いて居つた。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
白雲は低く飛び、狂瀾天に跳る印度洋上、世界の大惡魔と世に隱れなき七|隻の大海賊船をば、木葉微塵に粉韲いたる我帝國軍艦「日の出」と、神出鬼沒の電光艇とは、今や舷をならべて、本國指して歸航の途中である。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
されど、 憩いを知らぬ帆は、 嵐の中にこそ平穏のあるが如くに、 せつに狂瀾怒濤をのみ求むる也。
— 太宰治 『犯人』 青空文庫
騰るは天の竜巻と逆巻き喚ぶ狂瀾怒濤、頼め頼めの錨も何の船は木の葉の漂ふごとく、ちやりやきりり、きりやきりり、ちやりやきりり、きりやきりり、ちぎるる鎖、命の友綱、舷々相うち潰えて、さしもの元賊十万、あはれや千尋の底の藻屑となり了んぬ。
— 北原白秋 『新頌』 青空文庫
然るに各藩の執政者にして杞憂ある者は法を厳にし、戒を布きて、以て風俗の狂瀾を遮ぎり止めんと試みけれども、遂に如何ともする能はず。
— 北村透谷 『粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ』 青空文庫
水無月くらき夜半の窓に凭り、燭にそむきて、静かに君が名を思へば、我や、音なき狂瀾裡、したしく君が渦巻く死の波を制す最後の姿を観るが如、頭は垂れて、熱涙せきあへず。
— 石川啄木 『詩』 青空文庫
そうしてその真面目が、日常茶飯事に対しては意表に出づる逸話となり、国事に触れては鉄壁を砕く狂瀾怒濤となって行くもののようである。
— 夢野久作 『近世快人伝』 青空文庫