乾魚
かんぎょ異読 ひざかな・ひうお
名詞
標準
dried fish
文例 · 用例
銀明水に達したるは午後七時に垂んとす、浅間社前の大石室に泊す、客は余を併せて四組七人、乾魚一枚、麩の味噌汁一杯、天保銭大の沢庵二切、晩餐の総べては是の如きのみ、葉マキ虫の葉を綴りて寝ぬる如く、一同皆|蒲団に包まりて一睡す。
— ――明治三十六年八月七日御殿場口にて観察―― 『霧の不二、月の不二』 青空文庫
客は三組ばかり、各静に窓前の竹の清韻を聴きて相対せる座敷の一間奥に、主は乾魚の如き親仁の黄なる髯を長く生したるが、兀然として独り盤を磨きゐる傍に通りて、彼は先づ濡れたる衣を炙らんと火鉢に寄りたり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
槌と鶏と怪を為す事、上述デンデンコロリの話にもあり、山茶の木の槌は化ける、また家に置けば病人絶えずとて熊野に今も忌む所あり、拙妻の麁族請川の須川甚助てふ豪家、昔八棟造りを建つるに、烟出しの広さ八畳敷、これに和布、ヒジキ、乾魚などを貯え、凶歳に村民を救うた。
— 鶏に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
男は二人を森の中に待たせて置いて、再びどこかへ食い物を探しに行ったが、今度は握り飯に乾魚のあぶったのを取り添えて持って来た。
— 岡本綺堂 『小坂部姫』 青空文庫
婦を引張るやうにして、その家へ駈けつけてみると、病人は乾魚のやうに痩せた身体を床の中に横へてゐた。
— 大正六(一九一七)年 『茶話』 青空文庫
角のある龍や、乾魚のやうに痩せた学校教師や、白鳥のお嫁になつたお姫様や、そんな面白い話を幾つとなく聴かせたが、娘は黙つて聴いてゐて、時々「はい」とか、「いゝえ」とか応答をするに過ぎなかつた。
— 大正七(一九一八)年 『茶話』 青空文庫
そして乾魚のやうな痩せた体躯をぐたりと椅子の上に下すと、居合はせた党員の誰彼を見て言つた。
— 大正八(一九一九)年 『茶話』 青空文庫
皮膚には一滴の血の気もなく下瞼がブクリと膨れて垂れ下り、大きな眼は乾魚のように光を失っていた。
— 海野十三 『西湖の屍人』 青空文庫
作例 · 標準
「おばあちゃん、その乾魚、七輪で軽く炙ると香ばしくてとっても美味しそうだね」
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漁村の至る所の軒下で見られる乾魚が風に揺れる風景は、この土地の厳しい冬を象徴する風物詩だ。
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保存食として丹念に作られた乾魚は、雪に閉ざされる冬の間、村人にとって貴重なタンパク源となってきた。
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