不治
ふじ異読 ふち
名詞名詞-の形容詞頻度ランク #15745 · 青空 200 例
標準
incurability
文例 · 用例
もし不治と云えばその病人の口を蒸して殺してしまう。
— 寺田寅彦 『マルコポロから』 青空文庫
世にも稀有な鬼才をもちながら、不幸にして現代に認められることが出来ないで、あまつさへその若い生涯の殆んど全部を不治の病床生活に終つて寂しく夭死して仕舞つた無名の天才画家のことを考へると、私は胸に釘をうたれたやうな苦しい痛みをかんずる。
— 萩原朔太郎 『月に吠える』 青空文庫
金融界の乾の手輩としてN・R漁業権を背景として、政党と政党の対立に山師の貫祿を見せた彼も、内閣が更迭すると疑獄事件のうずのなかに、不治の病を発してしまった。
— 吉行エイスケ 『大阪万華鏡』 青空文庫
それは、第一には父の春田が当時不治の病気にかかっていた事である。
— 寺田寅彦 『亮の追憶』 青空文庫
弱いからだにとうとう不治の肺患が食い込んでしまった。
— 寺田寅彦 『亮の追憶』 青空文庫
しかし一方ではまた彼が不治の病気を自覚して死に所を求めていたに過ぎないのだと言い、あるいは一種の気違いの所業だとして簡単に解釈をつけ、そうしてこの所業の価値を安く踏もうとする人もあるであろう。
— 寺田寅彦 『時事雑感』 青空文庫
気丈な母は良人の病が不治だということを知ると、毎晩家事が片づいてから農学校の学生に来てもらって、作文、習字、生理学、英語というようなものを勉強し始めた。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
だがやつぱり不治なぞといふことはないだらうと、私は猶|一縷の望みは消さないで持つてゐたことに、誇りをさへ感じた。
— 中原中也 『亡弟』 青空文庫