凝脂
ぎょうし
名詞
標準
solidified oil
文例 · 用例
その白さがまた、凝脂のような柔らかみのある、滑な色の白さで、山腹のなだらかなくぼみでさえ、丁度雪にさす月の光のような、かすかに青い影を湛えているだけである。
— 芥川龍之介 『女体』 青空文庫
ただ這入る度に考え出すのは、白楽天の温泉水滑洗凝脂と云う句だけである。
— 夏目漱石 『草枕』 青空文庫
その前にひと眼、この清らかな死骸を見せて貰った平次は、念のため背中の凄まじい傷、――蝋化したような蒼白い凝脂に、痛々しくも残る傷を見て、多勢の人たちを眼顔で隣の部屋に追いやり、父親の市兵衛といっしょに残っている、妹娘のお吉に、ささやき加減に訊くのです。
— 遠眼鏡の殿様 『銭形平次捕物控』 青空文庫
見事な凝脂は肩から滑ってトロリと淀んで、腋の下から肘関節の桃色に流れる美しさは想像も及ばぬ魅力ですが、そこもまた無瑕の壁で賽の目の入墨などという汚らしいものはありません。
— 怪盗系図 『銭形平次捕物控』 青空文庫
凝脂に銀の粉を撒いたような、桃色珊瑚を薄絹で包んだような、それは実に素晴らしい肉体です。
— 怪盗系図 『銭形平次捕物控』 青空文庫
お絹よりはほつそりして居ますが、蒼味を帶びた眞珠色の皮膚、凝脂が銀のやうに光つて、その上を血潮の網の目で覆つた痛々しさは何に譬へるものもありません。
— 狼の牙 『錢形平次捕物控』 青空文庫
こんもりした二つの乳房の神秘な曲線、鳩尾から腹部への、なだらかな凝脂。
— 二人娘 『錢形平次捕物控』 青空文庫
十八といふにしては成熟しきつた身體も見事に、薄紅を含んだ温かい凝脂、公卿眉に柔かい鼻筋、唇が濡れて、時々せぐり上げる歔欷も、痛々しく可愛らしい限りです。
— 歎きの幽澤 『錢形平次捕物控』 青空文庫