苦海
くかい異読 くがい
名詞
標準
sea of suffering
文例 · 用例
誰かも云ったように、砂漠と苦海の外には何もない荒涼|落莫たるユダヤの地から必然的に一神教が生れた。
— 寺田寅彦 『札幌まで』 青空文庫
然れども苦海塵境を脱離して一身を挺出せんとするは、人間の道にあらず。
— 北村透谷 『山庵雑記』 青空文庫
苦海塵境に清涼の気を輸び入るゝにあらざれば、詩人は一の天職を帯びざる放蕩漢にして終らんのみ。
— 北村透谷 『山庵雑記』 青空文庫
某評者の言へりし如く、佐太夫の生涯は江戸の苦海に沈みし後、前半部とは全く異れる人物となれり。
— 北村透谷 『「伽羅枕」及び「新葉末集」』 青空文庫
十五にして苦海に堕ち、それより浮沈隆替の跡は種々に異なれども、要するに色を売る歴史のみにして、恋を談ずる者にあらず。
— 北村透谷 『「伽羅枕」及び「新葉末集」』 青空文庫
苦海では思いのほか涼しい風が吹いたが、再び運河に入るとまた暑くなった。
— 寺田寅彦 『旅日記から(明治四十二年)』 青空文庫
苦海十年の波を半分以上も泳ぎ越すうちに、あとにもさきにもたった一度の恋をした相手は立派な武士である。
— 岡本綺堂 『箕輪心中』 青空文庫
鳥かげに鼠なきしてなぶられるこれも苦海のうさはらし、愚痴がのませる冷酒はしんきしんくのアヽくの世界。
— 竹久夢二 『砂がき』 青空文庫