擬死
ぎし
名詞
標準
feigning death
文例 · 用例
さつき私が、自信あり気な先輩の口調で大きく見得を切つたりしたさまを見てハルミは何んなおもひであつたかと気づくと、私は堪らなくなつて、真実小さなコメツキ虫が擬死を装ふたり、あをむけのままでピンとはねあがつたりする姿を自分に移して、寝台の上ではねあがつたり、死んだりした。
— 牧野信一 『真夏の朝のひとゝき』 青空文庫
私は、更に自分を彼等に発見されることを怖れて、息を殺したまま、擬死の態を装ふのであつたが、まんまるく視開いたままの両眼は何うしても閉ぢることは出来なかつた。
— 牧野信一 『真夏の朝のひとゝき』 青空文庫
歯ぎしりして死んでいったと聞いている。
— 太宰治 『緒方氏を殺した者』 青空文庫
私も少しどぎまぎして、わるかったかな?
— 太宰治 『ダス・ゲマイネ』 青空文庫
その煮え返る釜の中にあつて、私は過ぎし日の「自己統一」を追惜するのであつた。
— 中原中也 『我が生活』 青空文庫
掛川と云えば佐夜の中山はと見廻せど僅かに九歳の冬|此処を過ぎしなればあたりの景色さらに見覚えなく、島田|藤枝など云う名のみ耳に残れるくらいなれば覚束なし。
— 寺田寅彦 『東上記』 青空文庫
雪の宵 青いソフトに降る雪は 過ぎしその手か囁きか 白秋ホテルの屋根に降る雪は過ぎしその手か、囁きか ふかふか煙突|煙吐いて、 赤い火の粉も刎ね上る。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
しづかにしづかに酒のんでいとしおもひにそそらるる…… ホテルの屋根に降る雪は 過ぎしその手か、囁きかふかふか煙突煙吐いて赤い火の粉も刎ね上る。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫