隠逸
いんいつ
名詞
標準
seclusion
文例 · 用例
嘗て魔界の一ときを経歴したあと、芝の白金でも、今里でも、隠逸の形を取った崖下であるとか一樹の蔭であるとかいう位置の家を選んだ。
— 岡本かの子 『雛妓』 青空文庫
わたしは古人の隠逸を学ぶでも何でもなく、何とかしてこの暑苦を凌ごうがためのわざくれから、家の前の狭い路地に十四五本ばかりの竹を立て、三間ほどの垣を結んで、そこに朝顔を植えた。
— 島崎藤村 『秋草』 青空文庫
もし事情が許せば、静かなこの町で隠逸な余生を楽しむ場合、陽気でも陰気でもなく、意気でも野暮でもなく、なおまた、若くもなく老けてもいない、そしてばかでも高慢でもない代りに、そう悧巧でも愚図でもないような彼女と同棲しうるときの、寂しい幸福を想像しないではいられなかった。
— 徳田秋声 『挿話』 青空文庫
曰く唐、曰く宋、或は重厚典雅を崇び、或は清新流麗を崇ぶ、時世の推移と共に変遷ありと雖、究竟清風明月を歌ひ神仙隠逸を詠じ放浪自恣なるに過ぎず、絶へて時代の感情を代表し、世道人心の為めに歌ふものあるなし。
— 山路愛山 『頼襄を論ず』 青空文庫
酒が好きで私も三四度一緒に飲んだことがあるが、その隠逸ぶりは徹底したものであつて、何もかも棄ててしまつた境涯は、むしろ私には羨ましい位のものであつた。
— 吉井勇 『青春回顧』 青空文庫
併しその若々しさは泣菫氏に見る花やかなところが無く、却つてジミで隠逸の風があつた。
— 三木露風 『明治詩壇の回顧』 青空文庫
たとえ時代が移って忘れられようと、忘恩を責めもせず、かつて名聞をかえりみぬ隠逸の長者だから、どんな所にひそんでいるかわかるまい。
— 中村清太郎 『ある偃松の独白』 青空文庫
ある意味で俊成は、隠者文芸が全歌壇的色彩をもつようになったために、隠逸を捨てたともいえるのである。
— 風巻景次郎 『中世の文学伝統』 青空文庫
作例 · 標準
彼は俗世の喧騒を逃れ、山奥での隠逸生活を選んだ。
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文人たちは、創作活動に専念するため、しばしば隠逸の地を求めた。
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隠逸して得た静寂の中で、彼は自己の内面と深く向き合った。
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隠逸とは、単なる逃避ではなく、精神的な成熟を求める道でもある。
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