温気
うんき
名詞
標準
heat
文例 · 用例
即ち例へば「古池」といふ言葉は、日本人の連想からは直ちに古い寺院の池や、庭園などにある閑雅で苔むした小さな溜水の池をイメーヂするが、温気のない西洋にはそんな古池が無いのであるから、西洋人のこの語から連想するイメーヂは、アルプスやスヰスの山中などにある、青明に澄んだ大きな湖水であるだろう。
— 萩原朔太郎 『詩の翻訳について』 青空文庫
山越しに木曾路へ出て、汽車に乗るとすれば、トンネル又トンネルがあつて、この温気に、土竜のやうに、暗の窖を這ひ、石炭の粉の雨を浴びなければならない。
— 小島烏水 『天竜川』 青空文庫
これはつまり比較的暖かい地上近くの空気が温気を含んだままで気流につれて上昇し、高層の気圧の低い処へ行くに従って膨脹して冷えて来る、ある処まで行くと雲と凝り雨になってしまう事もあるが、ごく寒い時にはこれが直ちに凍って小さい雪片となりこれが次第次第に大きく生長する。
— 寺田寅彦 『雪の話』 青空文庫
蒼空は培養硝子を上から冠せたように張り切ったまま、温気を籠らせ、界隈一面の青蘆の洲はところどころ弱々しく戦いている。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
それからがくがくして歩行くのが少し難渋になったけれども、ここで倒れては温気で蒸殺されるばかりじゃと、我身で我身を激まして首筋を取って引立てるようにして峠の方へ。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
暑い時分じゃが、理窟をいうとこうではあるまい、私の血が沸いたせいか、婦人の温気か、手で洗ってくれる水がいい工合に身に染みる、もっとも質の佳い水は柔かじゃそうな。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
酒の香と女の息と、火のぬくもりとで蒸さる様であつた室の温気は、一旦障子をあけひろげた掃除のあとで、すつかり新らしい空気と入れかはつた。
— 平出修 『瘢痕』 青空文庫
時ならぬ温気のためか、それか、あらぬか、その頃熱海|一町、三人寄れば、風説をする、不思議な出来事というのがあった。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
作例 · 標準
例句