食い扶持
くいぶち
名詞
標準
food expenses
文例 · 用例
青森の人で、手が切れてからも、一年に一度ぐらいは出て来て、子供の食い扶持ぐらいはよこす、わ。
— 岩野泡鳴 『耽溺』 青空文庫
どうせ義雄さんの方から節ちゃんの食い扶持が行く訳ではなかろうし、台湾の伯母さんから見れば厄介者が一人舞込むようなものだからねえ。
— 島崎藤村 『新生』 青空文庫
このすまなさを何かで償いたいとの心がけから内儀さんの賃仕事を手伝ったり、内職の袋貼りなどで得た稼ぎ高を自分の食い扶持の足し前にしてくれるように、と爺さんの手へそっくり渡しているのだった。
— 矢田津世子 『神楽坂』 青空文庫
彼の一家も饑饉に祟られ、その日その日の食い扶持にさえ心を労さなければならなかった。
— 国枝史郎 『開運の鼓』 青空文庫
この八十町歩から現に二俵供出しているそうだが、供出は水田の所有者が個人的な所有量に応じて為すものであるから、むろん村人の多くは水田を所有しておらず、八十町歩を村人全体に割れば供出どころか二三ヵ月の食い扶持にしかならない。
— 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫ 『安吾新日本風土記』 青空文庫
彼女は自分で食い扶持を稼いでいるので、決して楽ではないであろうに、貧しい中でもリリーに滋養分を与えると見える。
— 谷崎潤一郎 『猫と庄造と二人のおんな』 青空文庫
近頃は義兄の荻野左仲のところにも居にくくなったとみえて、食い扶持だけを貰って、ツイ屋敷外の長屋に、鰥暮しの気楽さを楽んでいるのでした。
— 幻の民五郎 『銭形平次捕物控』 青空文庫
「あら、そんなにびつくりすること無いわ、押掛け嫁ぢやない、押掛け居候なの、食い扶持位は出すわ」 お君は九郎助の背負つて來た荷物を縁側から入れさせて、自分は入口からニジリ上がるのです。
— 八五郎の戀人 『錢形平次捕物控』 青空文庫