疑心
ぎしん
名詞
標準
doubt
文例 · 用例
訝かつても自分に殆んどない要素である故遂に推察出来ず、疑心悪鬼を生じ、芸術家を憎むに到る。
— 中原中也 『芸術論覚え書』 青空文庫
金儲けと財産だけしか頭にない嚊の親や、兄弟が、どんな疑心を僕に対して起すかは、云わずとも知れた話である。
— 黒島傳治 『鍬と鎌の五月』 青空文庫
もしそうだとすると長い間封じ込められていた化け物どももこれから公然と大手をふって歩ける事になるのであるが、これもしかし私の疑心暗鬼的の解釈かもしれない。
— 寺田寅彦 『化け物の進化』 青空文庫
白川が必ず引出してくると云つて居ても、其云ふことを当にしていいかどうかといふ狐疑心と、人を見くびる彼の高慢心とが、茲まで話が急転して来ようとは思がけない処であつたからである。
— 平出修 『瘢痕』 青空文庫
疑心暗鬼を生ずって奴でね……第一、おかしいじゃないですか。
— 渡辺温 『象牙の牌』 青空文庫
火事は一夜で燃え尽しても、火事場の騒ぎは、一夜で終るどころか、人と人との間の疑心、悪罵、奔走、駈引きは、そののち永く、ごたついて尾を引き、人の心を、生涯とりかえしつかぬ程に歪曲させてしまうものであります。
— 太宰治 『女の決闘』 青空文庫
しかし、それほどの師にすら、秋成の現実の対照に向つては、いつも絶対の感情の流露を許さぬ習癖が、うそ寒い疑心をもち==師のいひし事にもしられぬ事どもあつて、と結局は自力に帰り、独窓のもとでこそ却て研究は徹底すると独学|孤陋の徳を讃美して居る。
— 岡本かの子 『上田秋成の晩年』 青空文庫
「はい、その幽霊は、毎晩のようにハムレットさまの枕もとに立ってそう申しますので、ハムレットさまは、恐怖やら疑心やら苦悶やらで、とうとう御乱心あそばされたという根も葉も無い話でございます。
— 太宰治 『新ハムレット』 青空文庫