世捨て人
よすてびと
名詞
標準
hermit
文例 · 用例
平生こんな場合に尼などを見ると、世捨て人がどうしてあんなことをするかと醜く思われるのであるが、今日だけは道理である。
— 葵 『源氏物語』 青空文庫
別荘その他の証券は私のほうにあるが、もう世捨て人になってしまってからは、財産の権利も義務も忘れてしまって、留守居料も払ってあげなかったが、そのうち精算してあげるよ」 こんな話も相手は、入道が源氏に関係のあることをにおわしたことで気味悪く思って、私慾をそれ以上たくましくはしかねていた。
— 松風 『源氏物語』 青空文庫
くわしいことは世捨て人の私に想像ができませんでございました。
— 薄雲 『源氏物語』 青空文庫
見返ると船に乗る時着て来た単衣のじみな着物は、世捨て人のようにだらりと寂しく部屋のすみの帽子かけにかかったままになっていた。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
朱雀院が世捨て人の御境遇へおはいりになったために、そのお代わりにあそばされたことであったらしい。
— 若菜(上) 『源氏物語』 青空文庫
どうしてそんな世捨て人の心にこんな望みの楼閣が建てられたのであろうと、子孫への愛の深さが思われもし、神や仏に済まぬ気もされた。
— 若菜(下) 『源氏物語』 青空文庫
他の女房たちは楽しいふうで、明日の用意に物を縫うのに夢中になっていたり、老いて醜くなった顔に化粧をして座敷の中を行き歩いていたりしている一方で弁は、いよいよ世捨て人らしいふうを見せて、人は皆いそぎ立つめる袖のうらに一人もしほをたるるあまかな と中の君へ訴えた。
— 早蕨 『源氏物語』 青空文庫
そのころ父は、一切の公職から隠退して、いくら勧められても出ず、まことに世捨て人のごとく、佃島の閑居に隠遁していたので、あたしは父の傍にいて、父を慰めながら、住吉の渡船をわたって通い、日本橋植木|店の藤間の家元に踊りをならいなどして、劇作を心がけ、坪内先生によって新舞踊劇にこころざしていた。
— 長谷川時雨 『渡りきらぬ橋』 青空文庫