余寒
よかん
名詞
標準
lingering winter
文例 · 用例
梅|遠近南すべく北すべく「遠近」という語によって、早春まだ浅く、冬の余寒が去らない日和を聯想させる。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
その年は余寒が割合に長かったせいか、池の岸にも葦の青い芽がまだ見えなかった。
— 帯取りの池 『半七捕物帳』 青空文庫
――今年余寒の頃、雪の中を、里見、志賀の両氏が旅して、新潟の鍋茶屋などと併び称せらるる、この土地、第一流の割烹で一酌し、場所をかえて、美人に接した。
— 泉鏡花 『古狢』 青空文庫
十一 二月の半ば、余寒の風のまだ肌にとげとげしいころ、銀子は姉芸者二人に稲福、小福など四五人と、田所町のメリンスの風呂敷問屋の慰安会にサ―ビスがかりを頼まれ、一日|鶴見の花月園へ行ったことがあった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
未だ二月の余寒の強い比にあっては、蠅は珍らしかった。
— 田中貢太郎 『蠅供養』 青空文庫
冬は余寒に極まって梅咲く春に向いました。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
尤もこの正月は寒くって、一月十六日から三日つづきの大雪、なんでも十年来の雪だとかいう噂だったが、それでも二月なかばからぐっと余寒がゆるんで、急に世間が春らしくなった。
— 岡本綺堂 『鯉』 青空文庫
余寒の中に、羽虫をとつてゐる雉の、この鳥類の精神的位置といふものも、よく捉へられてゐる。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫