不見識
ふけんしき
形容動詞名詞
標準
thoughtless
文例 · 用例
そうかと思うと一方で立体派や未来派のような舶来の不合理をそのままに鵜呑みにして有難がって模倣しているような不見識な人の多い中に、このような自分の腹から自然に出た些細な不合理はむしろ一服の清涼剤として珍重すべきもののような感がある。
— 寺田寅彦 『津田青楓君の画と南画の芸術的価値』 青空文庫
第一、野良声の調子ッぱずれの可笑い処へ、自分主人でもない余所の小児を、坊やとも、あの児とも言うにこそ、へつらいがましい、お坊ちゃまは不見識の行止り、申さば器量を下げた話。
— 泉鏡花 『春昼』 青空文庫
不見識なのはもちに捏ちられた蠅の形で、窓にも踏台にも、べたべたと手足をあがいて附着く。
— 泉鏡花 『第二菎蒻本』 青空文庫
幽人高士のあまりに少い今の乱脈さは、その気品の低く、香気の薄く、守ることの浅い不見識は、あの市井無頼の徒たりとも口にすることを恥ずる暴言と態度の賤鄙と(いや、それよりも下俗な覆面の残虐と私情の悪罵と)あの卑劣とは何事であろう。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
僕も、――今まで夢中になっていた女を実際通り悪く言うのは、不見識であるかのように思ったが、――それとなく分るような言葉をもって、首ッたけ惚れ込んでいるのではないことを説明し、女優問題だけは僕の事業の手初めとして確かにうまく行くように言って、安心させようとした。
— 岩野泡鳴 『耽溺』 青空文庫
その上、新子がだまっていればいるほど、それはいよいよ夫人の気勢を、煽ることになるらしく夫人はいよいよ図に乗って、「この店で働いているなんて云えば、とても体裁がいいけれど……私は、良人が、こんな不見識な商売をしていることだって、我慢できないんですよ。
— 菊池寛 『貞操問答』 青空文庫
行きたくないと言って置きながら、直ぐ掌をかえすように、行かせて貰いますと飛びつくのは余りに不見識で、浅ましい。
— 織田作之助 『青春の逆説』 青空文庫
だが、久保は、此方からそんなことを云つてやるのは、不見識のやうで、堪へずには居られなかつた。
— 牧野信一 『階段』 青空文庫