火除け
ひよけ
名詞
標準
protection against fire
文例 · 用例
一ツ橋門外の二番御|火除け地の隅に居据っている雪だるまも、一方に曲木家の御用屋敷を折り廻しているので、正月の十五日頃までは満足にその形骸を保っていたが、藪入りも過ぎた十七日には朝から寒さが俄かにゆるんだので、もう堪まらなくなって脆くもその形をくずしはじめた。
— 雪達磨 『半七捕物帳』 青空文庫
四人は三、四町ほども死骸をはこび出して、堀端の火除け地に捨てようとしたが、なるべく一日でも後れて人の眼につくことを考えて、かれらは協力してそこに大きな雪達磨を作った。
— 雪達磨 『半七捕物帳』 青空文庫
そうかと思えば、島原の芝居は炎暑で不入り、元金七千円金が、昨日の上り高では千五百円の大損、それに引きかえて、同所の、火除け地へ、毎夜出る麦湯の店は百五十軒に過ぎ、氷水売は七十軒、その他の水菓子、甘酒、諸商人の出ること、晴夜には、半宵の物成高五百円位、きわめて景気よしともある。
— 長谷川時雨 『朱絃舎浜子』 青空文庫
何でも豚というものは汚物を食うので屋敷内を清潔にしてくれる、それから火事の時には火に向って強い息を吹掛けるから火除けになるという事を聞いていた。
— 内藤鳴雪 『鳴雪自叙伝』 青空文庫
安産の御守りや火除けの御札がすこぶる盛んに売れるのを見ても、階級本能の退化は一様には行なわれず、あたかも盲腸の虫様突起が人によって、一寸のもあれば七寸のもあるごとくに、すでにいちじるしく退化した人と、未だ一向に退化しない人があり、しかもあまり退化しない人の方がなかなかに多数を占めていることがわかる。
— 丘浅次郎 『人間生活の矛盾』 青空文庫
今日の道灌山はうんと人出があるから、何んか面白いことがあるやうな氣がしてならねえ」「火除けの行だから、キナ臭かつたんだらう」「違げえねえ」 道灌山へ平次と八五郎が向つたのは、悠々と晝飯を濟ましてから、火伏せの行が始まるといふ申刻時分には、二人は無駄を言ひ乍ら若葉の下の谷中道を歩いて居りました。
— 火遁の術 『錢形平次捕物控』 青空文庫
今日の道灌山はうんと人出があるから、何か面白いことがあるような気がしてならねえ」「火除けの行だから、キナ臭かったんだろう」「違えねえ」 道灌山へ平次と八五郎が向ったのは、悠々と昼飯を済ましてから、火伏せの行が始まるという申刻(四時)時分には、二人は無駄を言いながら若葉の下の谷中道を歩いておりました。
— 火遁の術 『銭形平次捕物控』 青空文庫
右へ火除け用の厚い土塀に沿って廻ると、向うに屋根を掛けた釣瓶井戸があり、その手前の左側に勝手口があった。
— 山本周五郎 『さぶ』 青空文庫