灰燼
かいじん
名詞
標準
ash
文例 · 用例
この能役者は、木曾の中津川に避暑中だつたが、猿樂町の住居はもとより、寶生の舞臺をはじめ、芝の琴平町に、意氣な稽古所の二階屋があつたが、それもこれも皆灰燼して、留守の細君――(評判の賢婦人だから厚禮して)――御新造が子供たちを連れて辛うじて火の中をのがれたばかり、何にもない。
— 泉鏡太郎 『十六夜』 青空文庫
十一日、辛未、晴、若宮辻の人家焼亡す、酉戌両時の間、廿余町悉く灰燼と為る。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
七珍万宝、さながら灰燼となりにき」と書いてある。
— 田中貢太郎 『日本天変地異記』 青空文庫
東京の大部分が一朝にして灰燼に帰したかと思うと、ただむやみに神経が興奮して、まったく居ても立ってもいられないので、町の人たちと一緒になって毎日そこらを駈け廻っていた。
— 岡本綺堂 『指輪一つ』 青空文庫
聖母は彼|拙く彩りたる、罪障深きものゝ手に穢されたる影像の、灰燼となりて滅せんことをこそ願ふなれといふ。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
かくて帰り来たりしが、その家祝融氏の怒りに触れて、たちまち灰燼となりぬ。
— 南方熊楠 『失うた帳面を記憶力で書き復した人』 青空文庫
勘次はおつぎを相手に灰燼を掻き集めることに一|日を費した。
— 長塚節 『土』 青空文庫
彼は灰燼の中から鍋や釜や鐵瓶や其の他の器物をだん/\と萬能の先から掻き出した。
— 長塚節 『土』 青空文庫