義爪
ぎそう
名詞
標準
plectrum
文例 · 用例
その男が赤毛氈の縁台のまんなかにあぐらをかいて坐ったまま大きい碾茶の茶碗でたいぎそうに甘酒をすすりながら、ああ、片手あげて私へおいでおいでをしたでないか。
— 太宰治 『ダス・ゲマイネ』 青空文庫
これが看板で、小屋の正面に、鼠の嫁入に担ぎそうな小さな駕籠の中に、くたりとなって、ふんふんと鼻息を荒くするごとに、その出額に蚯蚓のような横筋を畝らせながら、きょろきょろと、込合う群集を視めて控える……口上言がその出番に、「太夫いの、太夫いの。
— 泉鏡花 『国貞えがく』 青空文庫
すると狸の子はまたふしぎそうに「だってぼくのお父さんがね、ゴーシュさんはとてもいい人でこわくないから行って習えと云ったよ。
— 宮沢賢治 『セロ弾きのゴーシュ』 青空文庫
年紀は二十八九、三十でもあろう、白地の手拭を姉さん被にしたのに額は隠れて、あるのか、無いのか、これで眉が見えたらたちまち五ツばかりは若やぎそうな目につく器量。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
……羽織は、まだしも、世の中一般に、頭に被るものと極った麦藁の、安値なのではあるが夏帽子を、居かわり立直る客が蹴散らし、踏挫ぎそうにする…… また幕間で、人の起居は忙しくなるし、あいにく通筋の板敷に席を取ったのだから堪らない。
— 泉鏡花 『木の子説法』 青空文庫
太郎は母者人の乳房にもみずからすすんでしゃぶりつくようなことはなく、母者人のふところの中にいて口をたいぎそうにあけたまま乳房の口への接触をいつまででも待っていた。
— 太宰治 『ロマネスク』 青空文庫
話が終ったとき、太郎は頬被りをたいぎそうにとって、三郎さんとか言ったが、あなたの気持ちはよく判る。
— 太宰治 『ロマネスク』 青空文庫
プラットホームに呆然と立っているうちに、列車は溜息のような汽笛を鳴らして、たいぎそうにごとりと動いた。
— 太宰治 『十五年間』 青空文庫