勤務先
きんむさき
名詞
標準
place of employment
文例 · 用例
それから暫らくのこと、私の勤務先は、日本橋の三越デパートメントの裏で、日本銀行と向いあったところだが、その建物の中で私たちが占めている室からは、太田道灌以来の名城を、松の緑の間に、仰ぎ見られるので、はじめて松樹国の日本に落ちついた気がした。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
伊部は二十五歳で医学博士になったくらいの秀才で、酒も煙草も飲まぬ、いわゆる品行方正の男だったし、勤務先の阪大病院でもまず相当な給料を貰っていたから、高利貸に金を借りるような生活はまるで想像も出来なかった。
— 織田作之助 『夜光虫』 青空文庫
その上相手は私の勤務先の手当や、子供の貯金まですっかり消費してしまい、終戦となるや、私の復員をおそれて無籍の嬰児を連れたまま行方をくらましてしまいました。
— 織田作之助 『土曜夫人』 青空文庫
その後斎田氏は勤務先の福岡裁判所から久留米に転勤すると、タッタ一人残っている門弟佐藤文次郎氏のためにワザワザ久留米から汽車で福岡まで出て来て稽古をしてやった。
— 夢野久作 『梅津只圓翁伝』 青空文庫
綿のはみ出た頭巾の端には「大阪府南河内郡林田村第十二組、楢橋廉吉(五十四歳)A型、勤務先大阪府南河内郡林田村林田国民学校」と達筆だが、律義そうなその楷書の字が薄給で七人の家族を養っているというこの老訓導の日々の営みを、ふと覗かせているようだった。
— 織田作之助 『世相』 青空文庫
従来海外の勤務先に同伴せる各海軍将校の夫人は、この際急速に合衆国内にある各自の家庭に帰還すべきものなり。
— 初出未詳 『茶話』 青空文庫
千人針を持って、電車の中や駅の前や勤務先などで縫って貰っている若い女性達は、その一つ一つの縫目にどんな想いを籠めていたことだろう。
— 宮本百合子 『私たちの建設』 青空文庫
療養所の医者と勤務先との間に連絡ないことは、恐るべき金、時間、精力の浪費を来して居る。
— 宮本百合子 『一九二九年一月――二月』 青空文庫