夜霧
よぎり
名詞頻度ランク #32797 · 青空 179 例
標準
night fog
文例 · 用例
記憶は見知らぬ波止場をあるいてにぎやかな夜霧の海にぽうぽうと鳴る汽笛をきいた。
— 萩原朔太郎 『記憶』 青空文庫
大都市の冬に特有な薄い夜霧のどん底に溢れ漲る五彩の照明の交錯の中をただ夢のような心持で走っていると、これが自分の現在住んでいる東京の中とは思えなくなって、どこかまるで知らぬ異郷の夜の街をただ一人こうして行方も知らず走っているような気がして来た。
— 寺田寅彦 『初冬の日記から』 青空文庫
人家も、燈灯も、畑も、森も、川も、丘も、そして歩いてゐる我我の體も、灰を溶したやうな夜霧の海に包まれてゐるのであつた。
— 南部修太郎 『一兵卒と銃』 青空文庫
人通りの絶えた四条通は稀に酔っ払いが通るくらいのもので、夜霧はアスファルトの上までおりて来ている。
— 梶井基次郎 『ある心の風景』 青空文庫
前面には湖水が遠く末広がりに開いて、かすかに夜霧の奥につづいていた。
— 寺田寅彦 『夢』 青空文庫
丸の内の夜霧がさらにその空想を助長したのでもあろう。
— 寺田寅彦 『蒸発皿』 青空文庫
たゞ大空には皎々とした月が冴え渡つて、もう夜霧が降りたのでせう、近所のトタン屋根も往来の地面も湿れたやうに白く光つてゐました。
— 岡本綺堂 『赤い杭』 青空文庫
春のおぼろ月の淡い光が川原の薄い夜霧を透して加茂の流れにほのかに映っていた。
— 織田作之助 『それでも私は行く』 青空文庫