回顧的
かいこてき
形容動詞
標準
retrospective
文例 · 用例
『以前のわたしは人生のことなんか何にもわからなかつたんですのよ、―』 と彼女はおかしい程、過去に対しては回顧的になつてゐるのです、 一軒の喫茶店に彼女と入りました、私は特に何事も話しをする興味もないので、だまつてゐました。
— 小説 『小熊秀雄全集−15−』 青空文庫
即ちその根本約束に於て、抽象的であり得ないと共に、作者の回顧的、追憶的、打算的の心持を容るゝ余地が絶対にないといふことである。
— 田山録弥 『動的芸術』 青空文庫
緩慢な、回顧的な生活にのみ囲繞されている地上の生活に於て、私はその最も純粋に近い現われを、相愛の極、健全な愛人の間に結ばれる抱擁に於て見出だすことが出来ると思う。
— 有島武郎 『惜みなく愛は奪う』 青空文庫
この制約が撤廃されぬ限り、大衆小説は、ある程度まで、読者の回顧的、反動的趣味と迎合しなければならない。
— 平林初之輔 『昭和四年の文壇の概観』 青空文庫
それで當時のポルトガル人の極東通商根據地のマカオ港は、日本から持ち來れる多量の金銀の置場に困る程で、街道に銀を鋪き詰める程であつたと、十七世紀の後半に出た旅行家などは、回顧的記事を傳へて居る。
— 桑原隲藏 『東西交通史上より觀たる日本の開發』 青空文庫
戦場や被空襲地で斃れた多くの同胞については、限りない哀悼の感を覚えるが、この回顧的な悲しみは異質なものである。
— 豊島与志雄 『或る日の対話』 青空文庫
この緒言は、この作品の生成および内容について重要な解説を含んでいるが、回顧的気分で書かれたものであり、かつは、作品の読後でなければ充分に理解しがたい点をも含んでいるので、最後に訳出して添えることにした。
— JEAN CHRISTOPHE 『ジャン・クリストフ』 青空文庫
これに反して、久保田万太郎は、その作品の回顧的な主題と保守的な生活感情とに拘はらず、確乎たる文学的精神を以てこれを貫き、稀にみる純粋かつ新鮮な舞台的生命を創造した。
— 岸田國士 『現代日本の演劇』 青空文庫