余勢
よせい
名詞
標準
surplus power
文例 · 用例
この頃になって、自分に親しかった、そうして自分の生涯に決定的な影響を及ぼしたと考えらるるような旧師や旧友がだんだんに亡くなって行く、その追憶の余勢は自然に昔へ昔へと遡って幼時の環境の中から馴染の顔を物色するようになる。
— 寺田寅彦 『重兵衛さんの一家』 青空文庫
強いて空虚を充たそうとする自覚的努力の余勢がかえって空虚その物を引展ばすようにも思われた。
— 寺田寅彦 『厄年と etc.』 青空文庫
いかにも十分十句のスピードの余勢を示した句で当時も笑ったが今思い出してもおかしくおもしろい。
— 寺田寅彦 『思い出草』 青空文庫
その本流と可児川の合するところ、急奔し衝突し、抱合し、反撥する余勢は、一旦、一大|鉄城のごとく峭立し突出する黒褐の岩石層の絶壁に殺到し、遮断されて水は水と撃ち、力は力と抗い、波は岩を、岩は波を噛んで、ここに囂々、淙々の音を成しつつ、再び変圧し、転廻し、捲騰し、擾乱する豪快無比の壮観を現出する。
— 北原白秋 『木曾川』 青空文庫
そして、蔦代の手の余勢はベッドの夜具の上にばたりと落ちた。
— 佐左木俊郎 『恐怖城』 青空文庫
が、もともとが君の豊漁を悦ぶあまりの余勢なのである。
— 牧野信一 『初夏通信』 青空文庫
藪から棒に候へども、いつぞや御話しいたし候ひし小生あの夜の実験以来、驚きと喜びとの余勢、一種のインスピレーションやうのもの存続いたし候て、躰にも多少の影響なきを得ず候ひき。
— 綱島梁川 『予が見神の実験』 青空文庫
彼の学びてこれを忍得るの故は、爾来終天の失望と恨との一日も忘るる能はざるが為に、その苦悶の余勢を駆りて他の方面に注がしむるに過ぎず。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫