残り火
のこりび
名詞
標準
embers
文例 · 用例
小女と出前持の男は、鍋火鉢の残り火を石の炉に集めて、焙っている。
— 岡本かの子 『家霊』 青空文庫
思うと、その日あたりが、私たちの幸福の最後の残り火の光が輝いた頃で、それから、直治が南方から帰って来て、私たちの本当の地獄がはじまった。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫
炉の中の火は、すっかり消えて、残り火が、ほのかに明るいだけであった。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
そして、やがて最後の残り火が消えてしまうと、そばにあった銃をとり、もはやみえなくなった戸口に銃をむけて、いつでも打金をおこせるように、親指をあて、全身をこわばらせて息を殺した。
— THE SECRET OF MACARGER'S GULCH 『マカーガー峽谷の秘密』 青空文庫
そして、便所へ行った帰りに、階下の炬燵の残り火をかき起して、半身をずりこませて、気ままに温まった。
— 正宗白鳥 『入江のほとり』 青空文庫
私は明治にあって、まだ生々とした江戸文化の残り火に肌ふれることができたのであった。
— 柳田国男 『故郷七十年』 青空文庫
そうして残り火の上へ置くと、あくる朝までにアメ色に焼けて干せてしまう。
— 三遊亭金馬 『江戸前の釣り』 青空文庫
毎夕|煤けた電灯が点く頃まで、ぼく一人が居残って残り火の十能だとか薬罐などを返しにゆくと「これあね、今日××商店の開業十周年に貰ったんだよ、喰べておいでよ」と、お赤飯に切りスルメや卵子焼の入った折をくれたりした。
— ――四半自叙伝―― 『忘れ残りの記』 青空文庫