奪い去る
うばいさる
動詞-五段-ラ行
標準
to take away
文例 · 用例
しかるに、盆踊りは野蛮の遺風だとかなんとかいって、一も二もなく先祖伝来の盆踊りを禁止し、他に楽み少なき農民の娯楽を奪い去るとは、当世の役人や警官はよくよく冷酷な根性になったものかな。
— 押川春浪 『本州横断 癇癪徒歩旅行』 青空文庫
その大事の物を夫の身より奪い去るとは、世にこれほど女人と戦い苦しむる悪業またあるべきや、これ夫を宮するならず実に妾輩を去勢するに当る。
— 鶏に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
欲心のために磯貝を害せしならば、紙入れや金時計をも奪い去るべき筈なるに、紙入れは引裂きたれど中味は無事なりしという。
— 岡本綺堂 『慈悲心鳥』 青空文庫
けれどその愛する女弟子、淋しい生活に美しい色彩を添え、限りなき力を添えてくれた芳子を、突然人の奪い去るに任すに忍びようか。
— 田山花袋 『蒲団』 青空文庫
それは、マレク・アデルがマティルダを奪い去るところだったが、――ちょうどその途端に、まだらな大きなキツツキが現われて、ほっそりした白樺の幹をせかせかと登り始めたので、すっかりそのほうに気を取られてしまった。
— ツルゲーネフ 『はつ恋』 青空文庫
行政機関であるすべての官庁はただ悪法を忠実に履行して国民の幸福を奪い去ることだけをその任務としている。
— 伊丹万作 『政治に関する随想』 青空文庫
いつたい、今まで私のように政治に対してまつたく興味を持たない国民が何人かいたということは、決して興味を持たない側の責任ではなく、興味を奪い去るようなことばかりをあえてした政治の罪なのである。
— 伊丹万作 『政治に関する随想』 青空文庫
私には、私の山、一〇〇〇メートル級の山々の何物をも眼界から奪い去るひどいブッシュの中であってもいいのだし、また単に山々の懐ろ深く入りながら、かえって峰々の姿も見ないで谷から谷へと歩くばかりでもいいのである。
— 加藤文太郎 『単独行』 青空文庫