不退
ふたい
名詞
標準
determination
文例 · 用例
だから実さんの恃むところは唯一つ「不退転の勇気」そのものである。
— 夢野久作 『実さんの精神分析』 青空文庫
まことや既に仏果を得て、勇猛精近の行堅固に、信心不退転の行者なれば、爾き黒暗闇の裡に処しても真如の鏡に心を照せば、胸間|霽れたる月のごとく、松の声せず鏡の音無きも結句静処を得たりと観じ、寂寞として水晶の数珠|爪繰りて泰然たり。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
梵天は此世の統治者で、二生の人たる嬰児の将来は、其の前生の唱名不退の大功徳によって梵天の如くにあるべしという意からの事だ。
— 幸田露伴 『蒲生氏郷』 青空文庫
此故に心は大海の浪と揺ぎて定まる時無く、縁は荒野の草と萠えて尽くる期あらねば、たま/\大勇猛の意気を鼓して不退転の果報を得んとするものも、今日の縁にひかれて旧年の心を失ふ輩は、可惜舟を出して彼岸に到り得ず、憂くも道に迷ひて穢土に復還るに至る。
— 幸田露伴 『二日物語』 青空文庫
かくしてこの神曲「翁」披露能後に認められた翁の人格と芸能の卓抜さがその後引続いて如何に名誉ある活躍を示したか……そうしてその間に於ける翁の精進が如何に不退転なもので在ったかは、後掲の記録を一見しただけでも一目瞭然であろう。
— 夢野久作 『梅津只圓翁伝』 青空文庫
勿論翁の斯道に対する研鑽と、不退転の猛練習とは晩年に到っても懈る事がなかった筈であるが、しかしこの以後の修養は所謂悟り後の聖胎長養時代で、この前の六十余年は翁の修業時代と思うのが適当のようである。
— 夢野久作 『梅津只圓翁伝』 青空文庫
不退転の精神が、心の裡に燃えて居た。
— 菊池寛 『極楽』 青空文庫
が、そのたびごとに、不退転の勇を翻し、諸人救済の大業をなすべき機縁のいたらんことを祈念した。
— 菊池寛 『恩讐の彼方に』 青空文庫