感情移入
かんじょういにゅう
名詞動詞-サ変動詞-自動詞
標準
empathy
文例 · 用例
自然形式といえば、いわゆる「象徴的感情移入」の形で自然界に自然象徴を見る場合、たとえば柳や小雨を「いき」と感ずるごとき場合をも意味し得るが、ここでは特に「本来的感情移入」の範囲に属する身体的発表を自然形式と考えておく。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
「象徴的感情移入」によって一種の自然象徴が現出されるに過ぎない。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
だがこれは感情移入の心理作用によるもので、別に不思議なことでも何でもない。
— 萩原朔太郎 『名前の話』 青空文庫
北原白秋といふ字面の印象から、あの明朗で官能的な詩人を表象するのも、やはりこれと同じく、作品や作家から受けた実の印象が、逆にその姓名の字画と結びつき、感情移入をしたものに外ならない。
— 萩原朔太郎 『名前の話』 青空文庫
仮装の精髄は、仮装しているものの中への感情移入であると文学は見ている。
— 宮本百合子 『仮装の妙味』 青空文庫
環境においてあるものが表現的であるということは、我々が主観的に、例えば感情移入の作用によって、その中へ意味を投入したというが如きことではない。
— 三木清 『哲学入門』 青空文庫
リップスの感情移入の説はそのよき弾機であろう。
— ――教養と倫理学―― 『学生と教養』 青空文庫
ゆえにリップスのいうごとき感情移入ではなくして、すでに主観はより大いなる組織性の一部署として位置づけられし機能的無限共鳴でなくてはならない。
— 中井正一 『近代美の研究』 青空文庫
作例 · 標準
映画の終盤で、冷酷だと思っていた悪役が抱える孤独な過去が明かされると、観客の多くは彼に感情移入し、その最期を悼むような沈黙が劇場を包んだ。
舞台俳優としてデビューした彼は、「台本を読むたびに役の悲しみが自分の中に流れ込んでくる」と語り、役柄への深い感情移入が演技の源泉であることを明かした。
SNSで発信される見ず知らずの他人の不幸に対し、過剰に感情移入して精神をすり減らしてしまう現象は、現代特有の「共感疲労」の一因として専門家から指摘されている。
育児に追われる母親を主人公にしたこの小説は、同じ境遇にある読者から「ページをめくるたびに、まるで自分の日常を見ているようで感情移入が止まらなかった」と絶賛された。