余光
よこう
名詞
標準
afterglow
文例 · 用例
見る見るその雲の大隆起の下には、火の川が一筋流れ、余光が天上の雲に反照して、篝火が燃えたようになった。
— 小島烏水 『谷より峰へ峰より谷へ』 青空文庫
」 自分は握手して、黙礼して、此不幸なる青年紳士と別れた、日は既に落ちて余光華かに夕の雲を染め、顧れば我運命論者は淋しき砂山の頂に立って沖を遙に眺て居た。
— 国木田独歩 『運命論者』 青空文庫
車を下りし時は霧雨やみて珍しくも西の空少しく雲ほころび蒼空の一線なお落日の余光をのこせり。
— 国木田独歩 『おとずれ』 青空文庫
西の空は夕日の余光が水のように冴えて、山々は薄墨の色にぼけ、蒼い煙が谷や森の裾に浮いています、なんだかうら悲しくなりました。
— 国木田独歩 『女難』 青空文庫
生命なき一ヶの機械にすぎざれど、さすがにかの欧米の天に雷の如く響きわたりたる此等楽聖が深潭の胸をしぼりし天籟の遺韻をつたへて、耳まづしき我らにはこの一小機械子の声さへ、猶あたゝかき天苑の余光の如くにおぼえぬ。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
わたくし達は食事をはじめながら、小くてもほんのり春の朝靄を立てゝいる池の面に、築山の梢を出た朝陽が光を落して、一たん靄に呑まれながらなお余光を水に弾ね返させて、空中へ抜け上る微妙な色調をうっとりと眺めました。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
そればかりでなく、いよ/\眺めに馴れて来ますと、火口原の雪の銀光は空に射向う途中から白朧の気を吐いて、屏風型に取巻く山々の峰をうす紫に染めなし、余光はなおも狭い盆の口から蒼空へ差し剰して、さすが冷厳な山頂の空も最初の一膜だけ、うっとりとその柔味を受付けておるのが感じられます。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
日が愈々暮れてゆくのだ、怪しい馬糞には、絹灑の余光が反り、露が早やしんみりと草つ葉をよぢのぼる。
— 北原白秋 『畑の祭』 青空文庫