朧夜
おぼろよ
名詞
標準
misty, moonlit night
文例 · 用例
……その柳の下を、駈けて通る腕車も見えず、人通りはちらほらと、都で言えば朧夜を浮れ出したような状だけれども、この土地ではこれでも賑な町の分。
— 泉鏡花 『国貞えがく』 青空文庫
月もなく、日もなく、樹もなく、草もなく、路もない、雲に似て踏みごたえがあって、雪に似て冷からず、朧夜かと思えば暗く、東雲かと見れば陰々たる中に、煙草盆、枕、火鉢、炬燵櫓の形など左右、二列びに、不揃いに、沢庵の樽もあり、石臼もあり、俎板あり、灯のない行燈も三ツ四ツ、あたかも人のない道具市。
— 泉鏡花 『伊勢之巻』 青空文庫
……不意気だねえ、――一石橋の朧夜に、」 四辺を見つつ袖を合せた、――雲を漏れたる洗髪。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
「私……もう御別離をお見送り申し旁々、せめて、この橋まで一所に来て、優しい事を二人でして、活きものの喜ぶのを見たかったんですけれども、二人ばかりの朧夜は、軒続きを歩行くのさえ謹まねばならないように、もう久しい間……私ねえ、躾けられているもんですから、情ないのよ。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
呼ばれて目を上げると、笠は破れて、紙を被せた、黄色に燻つたほやの上へ、眉の優しい額を見せた、頬のあたりが、ぽつと白く、朧夜に落ちた目かづらと云ふ顏色。
— 泉鏡太郎 『霰ふる』 青空文庫
お秋は夜とも分かず晝とも知らず朧夜に迷出でて、あはれ十九を一期として、同國浦崎と云ふ所の入江の闇に身を沈めて、蘆の刈根のうたかたに、其の黒髮を散らしたのである。
— 泉鏡太郎 『一席話』 青空文庫
湯へ行くにも、蕎麥屋へ入るにも紋着だつた事がある、こゝだけでも春の雨、また朧夜の一時代の面影が思はれる。
— 泉鏡太郎 『春着』 青空文庫
」 土間はたちまち春になり、花の蕾の一輪を、朧夜にすかすごとく、お町の唇をビイルで撓めて、飲むほどに、蓮池のむかしを訪う身には本懐とも言えるであろう。
— 泉鏡花 『古狢』 青空文庫
作例 · 標準
例句