汪然
おうぜん
副詞-と形容詞-たる
標準
vigorously flowing (e.g. tears)
文例 · 用例
便所に行つた時、枕についた時、僅かの隙を狙つては起つて來る此等の懸念や想像が、いま斯うして獨りで歩いてゐると恰も出口を見付けた水の樣に汪然として心の中に流れ始めたのだ。
— 地震日記 『樹木とその葉』 青空文庫
汪然として涙は時雄の鬚面を伝った。
— 田山花袋 『蒲団』 青空文庫
しかし、――しかしその乳房の下から、――張り切った母の乳房の下から、汪然と湧いて来る得意の情は、どうする事も出来なかったのである。
— 芥川龍之介 『母』 青空文庫
こういう風景をながめていると、病弱な樗牛の心の中には、永遠なるものに対するが汪然としてわいてくる。
— 芥川龍之介 『樗牛の事』 青空文庫
浪子は汪然として泣けり。
— 徳冨蘆花 『不如帰 小説』 青空文庫
彼らのあとに汪然として続くべきであった流れは、もはや涸れていたのである。
— 日本の悲劇 『鎖国』 青空文庫
私の郷里は正確にいうと愛知県|幡豆郡横須賀村であるが通称「吉良郷」と呼ばれ、後年この土地に任侠の気風が汪然として沸ぎりたったのも、彼等が尊敬|措く能わざる領主、吉良上野に対する愛情の思い止みがたきものに端を発しているといえないこともない。
— 尾崎士郎 『本所松坂町』 青空文庫
その頃まで、条約改正に無関心であった国内の輿論が汪然として湧きたってきたのは、伊藤内閣が組織され、新外務大臣としての井上が乗りだして来てからである。
— 尾崎士郎 『早稲田大学』 青空文庫