懐旧
かいきゅう
名詞
標準
reminiscence
文例 · 用例
それはとにかく、彼が近頃急に懐旧的の傾向を帯びて来たのはどういう訳であろう。
— 寺田寅彦 『年賀状』 青空文庫
繰り返しても繰り返しても飽くを知らぬのは、またこの懐旧談で、浮き世の波にもまれて、眉目のどこかにか苦闘のあとを残すかたがたも、「あの時分」の話になると、われ知らず、青春の血潮が今ひとたびそのほおにのぼり、目もかがやき、声までがつやをもち、やさしや、涙さえ催されます。
— 国木田独歩 『あの時分』 青空文庫
恋の曲、懐旧の情、流転の哀しみ、うたてやその底に永久の恨みをこめているではないか。
— 国木田独歩 『女難』 青空文庫
読書、弾琴、月雪花、それらのものは一つとして憂愁を癒すに足らず、転た懐旧の媒となりぬ。
— 泉鏡花 『妖僧記』 青空文庫
懐旧の感がむらむらと湧く。
— 岡本綺堂 『思い出草』 青空文庫
そして書中に、朱鱗洞葉平の名を見出して、懐旧の情を新たにした。
— 種田山頭火 『三八九雑記』 青空文庫
十三日、辛卯、鴨社の氏人菊大夫長明入道、雅経朝臣の挙に依りて、此間下向し、将軍家に謁し奉ること度々に及ぶと云々、而るに今日幕下将軍の御忌日に当り、彼の法花堂に参り、念誦読経の間、懐旧の涙頻りに相催し、一首の和歌を堂の柱に注す、草モ木モ靡シ秋ノ霜消テ空キ苔ヲ払フ山風同年。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
建文帝の左の御趾には黒子ありたまいしことを思ひ出でゝ、亮近づきて、御趾を摩し視るに、正しく其のしるし御座したりければ、懐旧の涙|遏めあえず、復仰ぎ視ること能わず、退いて其由を申し、さて後自経して死にけり。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫