銀世界
ぎんせかい
名詞
標準
snowscape
文例 · 用例
東の空から明け初めて、寝呆けたような鴉の声と五位鷺の声とが宮の森のあたりからかすかに聞えて来ましたが、静寂な天地はたちまちそれを吸い取って、まだ闇の気配の残る、燻しをかけた銀世界にはなおも霏々として雪は降り続くのでした。
— 岡本かの子 『仏教人生読本』 青空文庫
雨戸をあけたら、こう、その、まあ一種の、銀世界、とでも、等と汗を拭き拭き申し上げるのであるが、一種も二種もない、実に、愚劣な意見である。
— 太宰治 『乞食学生』 青空文庫
西郊角筈の銀世界も無くなりたり。
— 大町桂月 『久地の梅林』 青空文庫
西郊には、新宿停車場より程近き角筈の銀世界、蒲田の梅屋敷より程遠からぬ原村の立春梅あり。
— 大町桂月 『東京の近郊』 青空文庫
角筈の銀世界のやつをそのまゝ移して持つて来たものもある。
— 田山録弥 『樹木と空飛ぶ鳥』 青空文庫
私の家にあるやつは、銀世界の古物で、もう余程わるくなつてはゐるけれども、それでも苔蘚などはかなりに多く、剣戟のやうな枝に一面に花をつけて碧空に聳えてゐる形はちよつと奇観である。
— 田山録弥 『樹木と空飛ぶ鳥』 青空文庫
舞いだしたとなると、鉄火というか、伝法というか、雪までがたいそうもなく江戸前に気短なところがあって、豪儀といえば豪儀ですが、ちらりほらりと夜の引きあけごろから降りだしたと思ったあいだに、たちまち八百八町は二寸厚みの牡丹雪にぬりこめられて、見渡すかぎりただひと色の銀世界でした。
— 献上博多人形 『右門捕物帖』 青空文庫
――ふたたび豆州家のお下屋敷目ざして息づえあげさせました――雪はもとより降りつづいて、文字どおりの銀世界。
— 千柿の鍔 『右門捕物帖』 青空文庫