鑪
鑪
名詞
標準
文例 · 用例
ちょうど引潮の海の色は、煙の中に藍を湛えて、或は十畳、二十畳、五畳、三畳、真砂の床に絶えては連なる、平らな岩の、天地の奇しき手に、鉄槌のあとの見ゆるあり、削りかけの鑪の目の立ったるあり。
— 泉鏡花 『悪獣篇』 青空文庫
ああ、かすかに、 珠数のたま磨る円鑪。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫
午後、稀也さんを見送るべく熊本駅まで出かけたが、どうしても見出せなかつた、新聞を読んで帰つてくると、間もなく馬酔木さんが来訪、続いて元寛さんも来訪、うどんを食べて、同道して出かける、やうやくにして鑪板を買つて貰つた(今夜もまた元寛君のホントウのシンセツに触れた)。
— 三八九日記 『行乞記』 青空文庫
生きた骨にそのまゝ鑪を当てられるような、不快さが直接に腕に伝わる。
— 小林多喜二 『工場細胞』 青空文庫
彼は製罐部の護謨塗機の壊れた部分品を、万力台にはさんで、鑪をかけていた。
— 小林多喜二 『工場細胞』 青空文庫
――馬鹿野郎め、石鹸が泣きやがる、オイ鑪でゴシ/\やってくれ。
— 小林多喜二 『工場細胞』 青空文庫
内部の床の上には、銹ついた鍵だの、釘だの、鎖だの、蝶番いだの、鑪だの、秤皿だの、分銅だの、その他あらゆる種類の鉄の廃物が山の様に積まれてあった。
— A CHRISTMAS CAROL 『クリスマス・カロル』 青空文庫
一日がかりでシュタイクアイゼンに鑪をかけたり、靴の曲った釘を打ちかえたりするような、はたから見るとたわいもない労力までが、もう岩角へとっついたように緊張させる。
— 辻村伊助 『続スウィス日記(千九百二十三年稿)』 青空文庫