殊
こと
名詞
標準
文例 · 用例
予は殊に児供等の前で其気象台員の談話を読むのが何となく苦痛でならない。
— 伊藤左千夫 『大雨の前日』 青空文庫
殊更に家庭の円満とか家庭の趣味とか、八釜しく云うことが、却っておかしく思われて居った。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
予が半生の家庭が常に変則の軌道を歩したと云うも、一は眼病で廃学した故と生先短き親を持った故とである、殊に予の母は後妻として父の家に嫁がれ予の外に兄一人あるのみで、然かも最もおそき子であるから吾等兄弟が物覚のついた時分には老母の髪は半分白かった。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
いろいろの草花うつくしくおのがしし色に誇るが中に菖蒲の花なん殊に多かりける。
— 伊藤左千夫 『滝見の旅』 青空文庫
『思ひ出』の十首は殊に単純で平淡である。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
人もあらぬ実験室の夜の更けにしづかにひびく装置を聞きぬ この歌は題目が殊に新しく、着想も面白いが、その題目や着想が淡い情調に融合されて、少しも目立たないで能く単純化が行われて居る。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
岡田には梅がなかろうか……此草花は面白い 殊につくしがふるっている なかなか趣向もある 日本画家などにはこれほどの趣向あるものもないなどと笑われた。
— 伊藤左千夫 『根岸庵訪問の記』 青空文庫
色よく黄ばんだ晩稲に露をおんで、シットリと打伏した光景は、気のせいか殊に清々しく、胸のすくような眺めである。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫