金丹
きんたん
名詞
標準
文例 · 用例
此の又万金丹の下廻と来た日には、御存じの通り、千筋の単衣に小倉の帯、当節は時計を挟んで居ます、脚絆、股引、之は勿論、草鞋がけ、千草木綿の風呂敷包の角ばつたのを首に結へて、桐油合羽を小さく畳んで此奴を真田紐で右の包につけるか、小弁慶の木綿の蝙蝠傘を一|本、お極だね。
— 泉鏡太郎 『高野聖』 青空文庫
おい、其だつても無銭ぢやあ不可えよ憚りながら神方万金丹、一|貼三|百だ、欲しくば買ひな、未だ坊主に報捨をするやうな罪は造らねえ、其とも何うだお前いふことを肯くか、)といつて茶店の女の背中を叩いた。
— 泉鏡太郎 『高野聖』 青空文庫
私がね、小さい時、万はもう大きな身をして、良い処の息子の癖に、万金丹売のね、能書を絵びらに刷ったのが貰いたいって、革鞄を持って、お供をして、嬉しがって、威張って歩行いた児だものを。
— 泉鏡花 『照葉狂言』 青空文庫
越中富山の万金丹でも、熊の胃でも、三光丸でも五光丸でも、ぐっと奥歯に噛みしめて苦いが男、微笑、うたを唄えよ。
— 太宰治 『HUMAN LOST』 青空文庫
あの千金丹の洋傘があった筈だね。
— 宮沢賢治 『税務署長の冒険』 青空文庫
夏になると徳島からやって来た千金丹売りの呼び声もその一つである。
— 寺田寅彦 『物売りの声』 青空文庫
その傘に大きく、たしか赤字で千金丹と書いてあったような気がする。
— 寺田寅彦 『物売りの声』 青空文庫
小さな、今で言えばスーツケースのような格好をした黒塗りの革鞄に、これも赤く大きく千金丹と書いたのをさげていたと思う。
— 寺田寅彦 『物売りの声』 青空文庫