花明
かめい
名詞
標準
文例 · 用例
僕とボップ、裏街の夜、アアク燈、柳暗花明の巷を駈け抜けると、古寺院の境内、数時間、僕はだまって経過した。
— 吉行エイスケ 『飛行機から墜ちるまで』 青空文庫
さし俯向いた頸のほんのり白い後姿で、捌く褄も揺ぐと見えない、もの静かな品の好さで、夜はただ黒し、花明り、土の筏に流るるように、満開の桜の咲蔽うその長坂を下りる姿が目に映った。
— 泉鏡花 『縷紅新草』 青空文庫
がらんとして何もない石畳と絨氈の奥まった薄闇へ、高い窓から射し入る陽の光がステンドグラスの加減で、虹ともつかず、花明りともつかない表象の世界を幻出させている。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
「拝啓|柳暗花明の好時節と相成候処いよいよ御壮健|奉賀候。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
「喜多村緑郎……」「あゝ、柳暗花明の巷が憧れの的になつた!
— 牧野信一 『思ひ出した事(松竹座)』 青空文庫
忠孝の結晶として神に祀られる乃木将軍さえ若い頃には盛んに柳暗花明の巷に馬を繋いだ事があるので、若い沼南が流連荒亡した半面の消息を剔抉しても毫も沼南の徳を傷つける事はないだろう。
— 内田魯庵 『三十年前の島田沼南』 青空文庫
海へ下って来ているあたりの街には海草の匂いが立ち流れ、家の中の人人の顔まで照り返った夕日に染り、花明りによろめく蝶のような眩しさだった。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
」 葵の花が薔薇に移り変る切れ目の所で、弁の縮れた模様を検べるような首垂れた千鶴子の細い眉が、花明りに照り映えたあきらめの静かな線を描いていた。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫