錯倒
さくとう
名詞
標準
文例 · 用例
とにかく、父や自分の仇敵である都会文化の猛威に対して、少しも復讐の気持が起らず、かえって、その逞ましさに慄えて魅着する自分は、ひょっとして、大変な錯倒症の不良|娘なのではあるまいか。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
一種の性的錯倒ですな。
— 織田作之助 『夜の構図』 青空文庫
唯錯倒と紛乱とが叫ばれたに過ぎない――そして此の錯倒と紛乱の中心をなすものは「私が彼の女を殺した。
— 松永延造 『職工と微笑』 青空文庫
そのために、今日の所謂民主主義文学発言者の一部には、例えば平野謙の場合のように、信じられないような判断の混同と評価の錯倒さえ生じているからなのである。
— 宮本百合子 『婦人と文学』 青空文庫
同氏は本日余の執刀によって大脳手術を受けることになっているものであるが、氏の錯倒精神状態はこの手記によって自明である。
— 海野十三 『大脳手術』 青空文庫
二十五の若い男と、三十二の大年増の取組は、内容に於て甚だ錯倒的であったけれど、外観に於て、さほど目立たなかった。
— 海野十三 『棺桶の花嫁』 青空文庫
恩賜の義足、恩賜の義手、何という惨酷な、矛盾錯倒した表現であろう。
— 宮本百合子 『平和への荷役』 青空文庫
自分が椽近く座っている、その位置の知覚が妙に錯倒する心持がした。
— 宮本百合子 『夏遠き山』 青空文庫