蠣船
蠣船
名詞
標準
文例 · 用例
優しい柔かな流に面し、大橋を正面に、峰、山を右に望んで、橋添には遊廓があり、水には蠣船もながめだけに纜ってあって、しかも国道の要路だという、通は賑っている。
— 泉鏡花 『卵塔場の天女』 青空文庫
牡蠣船だの、支那料理屋の二階だの、海岸の空別荘だの、煙草屋の裏座敷だの……その中でも特に舌を捲いたのは、まだ明るいうちに或る大きな私立病院の玄関から、見舞人のような態度で上り込んで、奥の方に空いていた特等病室の藁蒲団の上に落ち付いた時であった。
— 夢野久作 『鉄鎚』 青空文庫
其処は活動写真の前の河縁でその町の名物の一つになつてゐる牡蠣船の明るい灯があつて、二つになつた艫の右側の室の障子が一枚開いて若い綺麗な女中の一人が此方の方へ横顔を見せて銚子を持つてゐたが、客は此方を背にして障子の蔭に体を置いてゐるので盃を持つた右の手先が見えてゐるのみで姿は見えなかつた。
— 田中貢太郎 『牡蠣船』 青空文庫
牡蠣船の先には又小さな使者屋橋と云ふ橋が薄らと見えてゐた。
— 田中貢太郎 『牡蠣船』 青空文庫
岸の柳がビロードのやうな若葉を吐いたばかりの枝を一つ牡蠣船の方に垂れてゐたが、その萠黄色の若葉に船の灯が映つて情趣を添へてゐた。
— 田中貢太郎 『牡蠣船』 青空文庫
秀夫はその柳の枝をちらと見た後に又眼を牡蠣船の方へとやつた。
— 田中貢太郎 『牡蠣船』 青空文庫
と、彼は五六日前に友達の一人が牡蠣船に行つて、其処の女中から筑前琵琶を聞かされたと言つたことを思ひ出して、俺もこれから行つてみやうかと思つた。
— 田中貢太郎 『牡蠣船』 青空文庫
秀夫はその牡蠣船では牡蠣料理以外に西洋料理も出来ると聞いてゐたので、西洋料理の一皿か二皿かを取つてビールを飲んでも好いと思つた。
— 田中貢太郎 『牡蠣船』 青空文庫