あたり一面
あたりいちめん
表現名詞副詞
標準
whole area
文例 · 用例
あたり一面、稲田の中で蛙が雨のように鳴いていたのである。
— 室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ 『小泉八雲の家庭生活』 青空文庫
あるいはまたあたり一面にわかに薄暗くなりだして、瞬く間に物のあいろも見えなくなり、樺の木立ちも、降り積ッたままでまた日の眼に逢わぬ雪のように、白くおぼろに霞む――と小雨が忍びやかに、怪し気に、私語するようにバラバラと降ッて通ッた。
— 国木田独歩 『武蔵野』 青空文庫
あたり一面は明るくて昼のようだった。
— 岡本かの子 『宝永噴火』 青空文庫
あたり一面まっ黒びろうどの夜だ」「まあ、不思議ですわね。
— 宮沢賢治 『シグナルとシグナレス』 青空文庫
「それが不思議ですよ、ここまで来ると、このあたり一面に美麗な花が咲いてて、何とも云えない良い匂がするのです、それにそこには※な女がたくさんいて、それが何か唄いながら踊ってたのですが、それが私の方を見て、いっしょに踊らないかと云って招くものですから、ついその気になって、ふらふらと入ったのですよ」
— 田中貢太郎 『妖女の舞踏する踏切』 青空文庫
打ち見たところ、首をかしげて、何考えるか寒の蛙の寒そうな、ちょっぴり温めてくれようか」 そう言ったかと思うと、はや佐助の五体はぱっと消え失せて、一条の煙が立ちのぼった、――と、見るより、煙は忽ち炎と変じて、あれよあれよという間に、あたり一面火の海と化し甲賀流火遁の術であった。
— 織田作之助 『猿飛佐助』 青空文庫
それと一しよに、ほかの二人は、へんな薬の草を口へ一ぱい入れこんで、ふう/\と、あたり一面へ、薄荷のやうなきついにほひのする烟をはき出します。
— 鈴木三重吉 『蛇つかひ』 青空文庫
つまり畑へ入って瓜を盗んで食ううちに、あたり一面の水になって、膝まで来て、胴へついて、素裸になって、衣ものを背負って、どうとか……って、話をするのを、小児の時、うとうと寝ながら聞いて、面白くって堪らない。
— 泉鏡花 『河伯令嬢』 青空文庫
作例 · 標準
桜の花があたり一面に咲いていた。
春になるとあたり一面が緑に染まる。
雪があたり一面に積もっている。
火事であたり一面が煙に包まれた。