転輾
てんてん
名詞
標準
文例 · 用例
全く無益な、路傍の苦労ばかり、それも自ら求めて十年間、転輾して来たということである。
— 太宰治 『困惑の弁』 青空文庫
慚愧、後悔の念に文字どおり転輾する。
— 太宰治 『酒ぎらい』 青空文庫
以来、十春秋、日夜転輾、鞭影キミヲ尅シ、九狂一拝ノ精進、師ノ御懸念一掃ノオ仕事シテ居ラレルナラバ、私、何ヲ言オウ、声高ク、「アリガトウ」ト明朗、粛然ノ謝辞ノミ。
— 太宰治 『創生記』 青空文庫
けれども、一夜、転輾、わが胸の奥底ふかく秘め置きし、かの、それでもやっと一つ残し得たかなしい自矜、若きいのち破るとも孤城、まもり抜きますとバイロン卿に誓った掟、苦しき手錠、重い鉄鎖、いま豁然一笑、投げ捨てた。
— 太宰治 『創生記』 青空文庫
私はいつでも口ごもり、ひどく誤解されて、たいてい負けて、そうして深夜ひとり寝床の中で、ああ、あの時にはこう言いかえしてやればよかった、しまった、あの時、颯っと帰って来ればよかった、しまった、と後悔ほぞを噛む思いに眠れず転輾している有様なのだから、偉いどころか、最劣敗者とでもいうようなところだ。
— 太宰治 『鉄面皮』 青空文庫
心の奥の一隅に、まことの盗賊を抱き、乞食の実感を宿し、懊悩転輾の日夜を送っている弱い貧しい人の子は、私の素振りの陰に罪の兄貴を発見して、ひそかに安堵、生きることへの自負心を持って呉れるにちがいない、と信じていた。
— 太宰治 『懶惰の歌留多』 青空文庫
男爵は、けれども、その夜は、流石に自分の故郷のことなど思い出され、床の中で転輾した。
— 燭をともして昼を継がむ。 『花燭』 青空文庫
その、ヒッポの子、ネロが三歳の春を迎えて、ブラゼンバートは石榴を種子ごと食って、激烈の腹痛に襲われ、呻吟転輾の果死亡した。
— 太宰治 『古典風』 青空文庫