迂余
迂余
名詞
標準
文例 · 用例
けれども、そこで降りてみて、いいようだったら、そこで一泊して、それから多少、迂余曲折して、上諏訪のあの宿へ行こう、という、きざな、あさはかな気取りである。
— 太宰治 『八十八夜』 青空文庫
「私の考えでは、この問題はよくよく研究し、審議する必要があると思いますねえ、ちょうどイギリスの議会でやるように、腹蔵なく互いに意見を開陳してですねえ、いいですか、あらゆる迂余曲折を明確に闡明するため、内輪にひとつ会議をする必要があると思うんですがねえ。
— または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊 『死せる魂』 青空文庫
そうしてその人間は、迂余曲折をきわめたしちめんどうな辞句の間に、やはり人間らしく苦しんだりもがいたりしていた。
— 芥川龍之介 『樗牛の事』 青空文庫
結論は賛否ハッキリ出来る場合が勿論極めて多いわけだが、その結論まで行く迂余曲折が論文の生命で、そうでなければ折角通過した地点も容易に失われねばならぬだろう。
— 戸坂潤 『読書法』 青空文庫
あの大鉄傘の中を、或は昇り、或は下り、迂余曲折する迷路、ある箇所は、八幡の藪不知みたいな、真暗な木立になって、鏡仕掛けで隠顕する、幽霊まで拵えてある。
— 江戸川乱歩 『吸血鬼』 青空文庫
小川は、欝蒼たる青葉に眼界を区切られ、迂余曲折して園の中心へと流れて行く。
— 江戸川乱歩 『地獄風景』 青空文庫
それを、迷う様に、迷う様にと、考えに考えて設計し、少しも隙間のない、高い樹木の壁で通路を作り、面積は僅か一丁四方程の中に、一里に余る迂余曲折の細道を作ってあるのだから、世界迷路史に通暁せる達人と雖も、その中心を極め、再び入口に引返すことは難中の難事である。
— 江戸川乱歩 『地獄風景』 青空文庫