穿
穿
名詞
標準
文例 · 用例
秋の日を受けた、弟の部屋の縁側は明るく、痩せ細つた足に足袋を穿いて、机に向つてゐる弟の姿が、庭の松の木や青空なぞと一緒に見えた。
— 中原中也 『亡弟』 青空文庫
私はさよならを云つて、冷えた靴を穿いた。
— 中原中也 『我が生活』 青空文庫
私はその暗い玄関で、靴を穿いたのを覚えてゐる。
— 中原中也 『我が生活』 青空文庫
靴を穿き終ると私は黙つて硝子張の格子戸を開た。
— 中原中也 『我が生活』 青空文庫
一度、基督教の伝導婦を妻君に持つ、丸顔の、袴など高く穿くが何だか自堕落な感じの、植物課の教師が訪ねて行つた時、校長は、妻が酷いヒステリーなので、随分私も学校で嫌な顔をしてゐる日があるに違ひないがと話した。
— 中原中也 『校長』 青空文庫
いよいよ出掛けに靴を穿いてゐる時、祖母がやつて来て、「小母さん達は立派な仕度をして来てをるだらうね」といつた言葉を胸にくりかへしながら、彼は田圃路を歩いた。
— 中原中也 『分らないもの』 青空文庫
銘仙の袷に金紗の羽織を着、兎の毛で縁をとつたオールドローズの繻子の肩掛に寒々とくるまり、海老茶の袴を胸高く穿いてゐる。
— 中原中也 『三等車の中(スケッチ)』 青空文庫
すると私は白い糊の付いた看護衣の、長い四角い顔の、スリッパを穿いた男を想ひ出すのである。
— ――世の母びと達に捧ぐ―― 『一つの境涯』 青空文庫