断篇
だんぺん
名詞
標準
文例 · 用例
四十年十二月 悪の窓 断篇七種 一 狂念あはれ、あはれ、青白き日の光西よりのぼり、薄暮の灯のにほひ昼もまた点りかなしむ。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
この断篇が読者の眼に映じた時、瞳裏に一道の電流を呼び起して、全身の骨肉が刹那に震えかしと念じて、道也は筆を執る。
— 夏目漱石 『野分』 青空文庫
後れ勝なる文学上の閲歴、断篇のみを作って未だに全力の試みをする機会に遭遇せぬ煩悶、青年雑誌から月毎に受ける罵評の苦痛、渠自らはその他日成すあるべきを意識してはいるものの、中心これを苦に病まぬ訳には行かなかった。
— 田山花袋 『蒲団』 青空文庫
自己陶酔、偉大なる断篇としてつかんで居て、特に金銭がバルザックの世界で最も変質しない普遍的な価値として(人間を支配するものとして)現れていることなどをあげて居ります。
— 一九四三年(昭和十八年) 『獄中への手紙』 青空文庫
その詞章が、断篇式に神賀詞にもはいっていって、みぬまおよび関係深い白鳥の生き御調がわり込んできたものであるらしい。
— 折口信夫 『水の女』 青空文庫
例の神功紀の文は、このくゝり媛からみつはへ続く禊ぎの叙事詩の断篇化した形である。
— 折口信夫 『水の女』 青空文庫
奈良朝のものゝ断篇だ、と言はれてゐる、伊予風土記の逸文に、天香具山は、伊予にもあると記して、天上のものが二分して、大和と伊予とに落ちて来た、と考へてゐるが、此は、後代の説明である。
— 折口信夫 『古代人の思考の基礎』 青空文庫
其村の冬祭りに来た行事が形式化し、竟に型をも行はぬ様になつて、伝説化して、名と断篇の説話ばかりあつて、実のない時代になつて、冬の行事であつたゞけに、冬の夜話の題材に上る様になつたので、かうした、人であつて、又、魑魅の族らしい者を考へ出したのでせう。
— 折口信夫 『翁の発生』 青空文庫