寤
寤
名詞
標準
文例 · 用例
鄭伯は寤生と云つて、(母の眠つてゐた間に生れた、即ち眠り産であつたといふ説と、逆さ子で難産であつたといふ説と二説ありますが)兎に角に母の気持を悪くした生れ方をした人ですが、其は勿論其の嬰児が特と然様した訳でも何でも有りません。
— 幸田露伴 『運命は切り開くもの』 青空文庫
其声を聞きつけて、兄上も寤め居たまへるや、此雨はまた如何に降りに降る事ぞ、さても口惜からずやと力無く睡気に云ふ。
— 幸田露伴 『鼠頭魚釣り』 青空文庫
吾人が睡りつ寤めつするのは、睡らんと欲して睡る時も有り、寤めんと欲して寤むる時も有るが、又睡らんと欲するにあらずして、おのづからに睡り、寤めんと欲するにあらずして、おのづからにして寤むる時もある。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
吾人が寤めて而して精神作用を起し出し做し出すに當つて、仔細に觀察する時は、或事を思ひ、或業を執らんが爲に寤めたのでは無くて、寤めたるが爲に或事を思ひ或業を執るに至る場合も本より少く無い。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
即ちおのづからにして寤めたるが爲に、精神勞作を開始することも有るのである。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
前夜就眠の時に當つて、明朝五時に於て覺めて、而して獵に赴かんと思ひ、或は六時に覺めて直に文を草せんと思ひて、そして五時或は六時に起き出づることも本より少くは無いが、然樣いふ精神の命令有るにあらずして、而もおのづからにして寤むることも亦少く無い。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
若し夫れおのづからにして寤むる場合は、之を其の人の精神、詳言すれば自意識よりして、身體に於て精神作用が開始されたのであると云はんよりは、之を其の人の身體、詳言すれば血液の運行状態よりして、睡眠境が攪破されて、そして精神作用が開始さる可くされたのだと云つた方が適當である。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
去年の暮から全半歳、その者の為めに感情を支配せられて、寐ても寤めても忘らればこそ、死ぬより辛いおもいをしていても、先では毫しも汲んでくれない。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫