思いなしか
おもいなしか
表現副詞
標準
it may be my imagination, but ...
文例 · 用例
膚の細い、黄い石や、黒い石の上を辷ると、思いなしか、沈んだ、冴えた声をして、ついと通る。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
そして、思いなしか、眼の光にも曇りが出来て、何となしに憔悴した表情がこの人の全外容に表われているのであった。
— 寺田寅彦 『雑記(2)』 青空文庫
草鞋を穿いた足の甲へも落ちた上へまた累り、並んだ傍へまた附着いて爪先も分らなくなった、そうして活きてると思うだけ脈を打って血を吸うような、思いなしか一ツ一ツ伸縮をするようなのを見るから気が遠くなって、その時不思議な考えが起きた。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
思いなしか青年の顔がまっかになっているように思われた。
— 寺田寅彦 『藤棚の陰から』 青空文庫
思いなしか、そのずっと先の方に恵庭の奇峰が夜目にもかすかに見やられるようだ。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
思いなしかその死んで凍えてしまった小十郎の顔はまるで生きてるときのように冴え冴えして何か笑っているようにさえ見えたのだ。
— 宮沢賢治 『なめとこ山の熊』 青空文庫
障子を一枚細目に開けてあるのが、縦に黒く見えて、薄か、蘆か揺ぐにつれて、この催とて、思いなしか、長く髪の毛の動くような色が添った。
— 泉鏡花 『露萩』 青空文庫
かねつけ蜻蛉が、ふわふわと、その時立ったが、蚊帳に、ひき誘われたようにふわりと寄ると、思いなしか、中すいて、塔婆に映って、白粉をちらりと染めると、唇かと見えて、すっと糸を引くように、櫺子の丸窓を竹深く消えたのである。
— 泉鏡花 『露萩』 青空文庫