綿屑
わたくず
名詞
標準
文例 · 用例
私は工場で余り乾いた空気と、高い温度と綿屑とを吸い込んだから肺病になったんだ。
— 葉山嘉樹 『淫賣婦』 青空文庫
お手の指が白々と、こう輻の上で、糸車に、はい、綿屑がかかったげに、月の光で動いたらばの、ぐるぐるぐると輪が廻って、爺どのの背へ、荷車が、乗被さるではござりませぬか。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
」 茶の室へ入るうしろから、「綿屑で結構よ。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
」鯰の魚軒、冷たい綿屑を頬張つた。
— 泉鏡太郎 『麻を刈る』 青空文庫
「あなたお背に綿屑かしら喰っついていますよ」「どこに?
— 鈴木三重吉 『千鳥』 青空文庫
偶々人が自動車を勧めると、寺田氏は綿屑で一杯詰つたやうな頭を強く掉つて、「あれに乗るとな、金銭が逃げる様な気持がしますわい。
— 大正七(一九一八)年 『茶話』 青空文庫
そのきらきらする光を両肩から背一杯にうけてゐると、身体中が日向臭く膨らんで、とろとろと居睡でもしたいやうな気持になるが、時をり綿屑のやうな白雲のちぎれが、そつと陽の面を掠めて通りかかると、急に駱駝色の影がそこらに落ちかぶさり、肌を刺すやうなつめたさがひとしきり小雨のやうに降りそそいで来る。
— 薄田泣菫 『独楽園』 青空文庫
唯、去来する思ひが――たとへば、袋物工場に通つてゐた母親が、夜も休まず石油の空箱を台にして(その箱の隅には小さな蜘蛛が綿屑みたいな巣をかけてゐた!
— 武田麟太郎 『釜ヶ崎』 青空文庫