褊狭
へんきょう
名詞
標準
文例 · 用例
それだけならばまだ好かったが、徳は兄には似ないで、かえって父栄玄の褊狭な気質を受け継いでいた。
— 森鴎外 『渋江抽斎』 青空文庫
初めは人相の悪い奴だと思つたが、黒木綿の大分汚なくなつた袴を穿いて居たのが、蕎麦屋の出前持をする男には珍らしいと云ふので、褊狭者の主筆が買つてやつたのだと云ふ。
— 石川啄木 『病院の窓』 青空文庫
されども歌人皆|頑陋褊狭にして古習を破るあたわず、古人の用い来りし普通の材料題目の中にてやや変化を試みしのみ。
— 正岡子規 『曙覧の歌』 青空文庫
これら不理の懲戒を受けたる者、残忍酷薄の人たらずんば必ず猜疑褊狭の人たるべきなり。
— 正岡子規 『病牀譫語』 青空文庫
久しく薗八一中節の如き古曲をのみ喜び聴いていたわたしは、褊狭なる自家の旧趣味を棄てて後れ走せながら時代の新俚謡に耳を傾けようと思ったのである。
— 永井荷風 『十日の菊』 青空文庫
韓愈の見解或は褊狭に走れるや知るべからず幕府の政令苛酷に過ぎたるや亦知るべからず。
— 永井荷風 『偏奇館漫録』 青空文庫
此れも極めて物質的、具体的のものをのみ云うのは褊狭ではあるまいか、吾人は何程立派な形体があればとて此れを取扱うに生命なき場合は、決してそれを現実とは思わないのである。
— 小川未明 『絶望より生ずる文芸』 青空文庫
善と悪、是と非、愛と憎しみ、寛容と褊狭など、人間相互の性格や気質の違いが、ぶっつかり合って突きとばしたり、押し戻してまた突き当ったり、休みなしに動いている。
— 山本周五郎 『おごそかな渇き』 青空文庫