利き目
ききめ
名詞
標準
文例 · 用例
そこで遡江部隊の遡という字からシンニユウを除いた朔だとか、国民に愬ふといふ愬から心を除いた上の字だとか言つてみるが、これもまた一向に利き目がない。
— 萩原朔太郎 『名前の話』 青空文庫
いやな顔をするな、例というものは実感がないと利き目が薄いものだ。
— ――生きる為に―― 『山谿に生くる人々』 青空文庫
やはり病院よりは田舎の空気が安くて利き目がよかったのである。
— 寺田寅彦 『異質触媒作用』 青空文庫
熱で渇いた口に薫りの高い振出しをのませ、腹のへったものの前に気の利いた膳をすえ、仕事に疲れたものに一夕の軽妙なレビューを見せてこそ利き目はあるであろう。
— 寺田寅彦 『マーカス・ショーとレビュー式教育』 青空文庫
それでこそ例えば津浪を戒める碑を建てておいても相当な利き目があったのであるが、これから先の日本ではそれがどうであるか甚だ心細いような気がする。
— 寺田寅彦 『津浪と人間』 青空文庫
そこで、阿片の代りに、もっと割が安い、利き目が遙かにきつい三号含有物がここでは用いられた。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
これは山の垢と呼んで、最も利き目の多い肥料の一つである。
— 島木健作 『生活の探求』 青空文庫
するうち悲哀に包まれた人々の環視のうちに、注射の利き目は次第に衰え、銀子の目先に黒い幕が垂れ、黒インキのようにどろどろした水の激流に押し流されでもするように、銀子は止め度もなくずるずる深く沈んで行き、これが死ぬことだと思った瞬間に、一切が亡くなってしまった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫