爪垢
つめあか
名詞
標準
文例 · 用例
爪垢で楽譜を汚して、万葉、古今を、あの臭い息で笛で吹くんだ。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
『爪垢を少しためて。
— ―― Ibi omnis effusus labor ! ―― 『浪漫趣味者として』 青空文庫
「ありがとう、たくさんです」と断ると、どてらは別に失望の体もなく、自分でかたまったうちの一本を、爪垢のたまった指先で引っ張り出した。
— 夏目漱石 『坑夫』 青空文庫
日が経つに従つて、級数的に入浴が面倒で億劫になり、さては、爪垢がたまつて、肌はじとじとしはじめ、鼻わきから頤にかけててらてらと油は浮くし、目脂はたまり放題、鼻糞は真黒にかたまつてゐる、身体を動かせば悪臭がにほつてるにちがひないのに、更に意に介しなくなるのだ。
— 武田麟太郎 『大凶の籤』 青空文庫
曲ったことは、爪垢ほどのことでも、自分にも人にも許さないこの俺が、「この俺が」下らない蛆虫共から穢らわしい者だと思われたと思うと、彼は歯が鳴るほど腹が立った。
— 宮本百合子 『三郎爺』 青空文庫
ガサガサした固い指で、やはり爪垢が一ぱいたまっていた。
— 久坂葉子 『灰色の記憶』 青空文庫
閑さえあれば、机に坐ったきりですわ」「能く続くよ」「私、この間見ましたら、御本に一々何年何月何日読破って書いてありましたのよ」「几帳面だね」「書斎の中がキチンとして、まるで書割のようですわ」「家の俊一なぞは些っと三郎の爪垢を貰って煎じて飲むと宜いんだよ」 とお父さんは長船君を推賞する。
— 佐々木邦 『嫁取婿取』 青空文庫