辺送
へん送
名詞
標準
文例 · 用例
座中では男の中の第一年下の二十七で、少々しいのも気の弱そうに見えるのが、今夜の会には打ってつけたような野辺送りの帰りと云う。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
かゝる夜の月も見にけり野辺送り これは俳人去来が中秋名月の夜に、甥の柩を送った時の句である。
— 岡本綺堂 『正月の思い出』 青空文庫
私も叔父の野辺送りに、かかる新年の風景を見るかと思うと、なんだか足が進まないように思われた。
— 岡本綺堂 『正月の思い出』 青空文庫
胎児と母親の野辺送りをした帰りがけにも、敬吾はトロンとした眼で、白木の墓標をふりかえって、「もうじきに大きな奴を立ててやるぞ。
— 夢野久作 『空を飛ぶパラソル』 青空文庫
野辺送りという位だから……ハハハ」 悔状は一々私が開封して眼を通したが、やはり愉快なのが混っていた。
— 夢野久作 『父杉山茂丸を語る』 青空文庫
そうして自分で葬儀屋を呼んで来たり、アルコールと綿を買って来て親父の身体を綺麗に拭き上げたりして、野辺送りを簡単に済ますと、親類や近所の人達に挨拶をして私を自分の店に引き取った。
— 夢野久作 『鉄鎚』 青空文庫
父の墓地は岡の上の小松の側と定まつて、軈ていよいよ野辺送りを為ることになつた時は、住み慣れた小屋の軒を舁がれて出た。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫
大政奉還の悲壮な意志は後日を待つまでもなく、おそらく将軍職を拝してから間もなかった霜夜の御野辺送りを済ました時に、すでにこの人の内に動いたであろう。
— 第一部下 『夜明け前』 青空文庫