枯れ葦
かれあし
名詞
標準
文例 · 用例
橋の上から見ると、滑川の水は軽く薄濁って、まだ芽を吹かない両岸の枯れ葦の根を静かに洗いながら音も立てずに流れていた。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
ふと葉子は目の下の枯れ葦の中に動くものがあるのに気が付いて見ると、大きな麦桿の海水帽をかぶって、杭に腰かけて、釣り竿を握った男が、帽子の庇の下から目を光らして葉子をじっと見つめているのだった。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
汀には去年見たときのように、枯れ葦が縦横に乱れているが、道端の草には黄ばんだ葉の間に、もう青い芽の出たのがある。
— 森鴎外 『山椒大夫』 青空文庫
堤防の内は一面に黄色な枯れ葦に領された広大な窪地であった。
— 伊藤野枝 『転機』 青空文庫
冬ではあるが、それでも、こうして立っている足元から前に拡がったこの広大な地に、目の届く処にせめて、一本の生々とした木なり草なり生えてでもいることか、ただもう生気を失って風にもまれる枯れ葦ばかり、虫一匹生きていそうなけはいさえもない。
— 伊藤野枝 『転機』 青空文庫
この先の見透しもつかないような広い土地――今はこうして枯れ葦に領されたこの広い土地――に、かつてはどれだけの生きものがはぐくまれたであろう。
— 伊藤野枝 『転機』 青空文庫
冬の陽ざしが、鈍い光を流れにともない、ゆるい川面へ斜めに落として、やがて暮れていく、水際の枯れ葦の出鼻に小舟をとどめて寒鮒を待つ風景は、眼に描いただけで心に通ずるものがある。
— 佐藤垢石 『寒鮒』 青空文庫
精出して取り返しますから、旦那も気を直しておくんなさい」 その日もここの仕事場は、そこらの畑や枯れ葦に夕霜の白く暮れるまで、みな仕事から離れなかった。
— 吉川英治 『梅里先生行状記』 青空文庫